中国語で「さん」「様」「君」「ちゃん」などの名前の呼び方・敬称
中国語の「~さん」「~様」などの敬称には、日本語の「~さん」のような万能な表現がありません。相手の性別や、自分と相手との年齢差、親しさなどによって変わってきます。
ここでは、様々な中国語の敬称や、「ちょっとすみません」などの呼びかけの言葉などを紹介していきます。サウンドマークをクリックすると音声が流れます。
目次
- 1. 「~さん」「~様」などの敬称の日本語と中国語の違い
- 2. 中国語の基本的な「~さん」「~様」などの表現
- 2-1. 中国語で、男性に対する「~さん」「~様」
- 2-2. 中国語で、女性に対する「~さん」「~様」
- 2-3. 中国語で、先生に対する敬称
- 3. 中国語で年齢差によって付ける「~さん」のような表現
- 4. 中国語で夫を呼ぶときに使う呼称
- 5. 中国語で「~君」「~ちゃん」にあたる愛称の表現
- 6. 中国語の「呼び捨て」は親しみを感じさせる
- 7. 中国語で地位の高い人に使う敬称
- 8. 中国人は知らない人への呼びかけに親族呼称を使う
- 9. 名前がわからない相手に対する中国語の呼びかけの言葉
- 10. 日本人が使いやすい中国語の呼びかけの言葉
- 10-1. 男性に対する中国語の呼びかけの表現
- 10-2. 女性に対する中国語の呼びかけの表現
- 10-3. 呼びかけに使う中国語の「すみません」
「~さん」「~様」などの敬称の日本語と中国語の違い
「~さん」や「~様」のように、名前の後ろにつければどういう人であれすべて敬称として機能するというものは中国語では存在しません。
ではどうするかと言うと、中国語では、男性には「ミスター」に相当するものをつけ、若い女性には「ミス」に相当するもの、若いとは言えない女性には「ミス」・「ミズ」あるいは「女史」に相当するものをつけます。ただこれらが「さん」や「様」と完全に同じかと言えば違います。日本と中国では、社会や文化が違うので「さん」や「様」と完全にイコールになる中国語の言い回しはないと言っていいでしょう。
そのため、以下では男女別、あるいは自分との相対的な年齢別、職業や立場別に変わってくる中国語の敬称を紹介していきます。
中国語の基本的な「~さん」「~様」などの表現
まずは基本的な中国語の敬称表現を学んでいきましょう。
男性に対する「~さん」のような表現は簡単なのですが、女性に対しては年齢によって敬称を変えて気を使います。
中国語で、男性に対する「~さん」「~様」
初対面の相手が男性だった場合、中国語で「~さん」「~様」と呼びかけるには、“先生 xiānsheng”を使うことができます。これは「先生」という意味ではなく、「ミスター」という意味の敬称です。
中国語で、女性に対する「~さん」「~様」
次に、相手が女性の場合、中国語で「~さん」「~様」と呼びかけるにはどう言えばいいか。これが難しい。年齢によって変わるからです。
“小姐xiǎojie”はかなり幅のある年齢層に使えますが、さすがに白髪の女性には使いづらい。
“女士nǚshì”はもっと幅広く使えますが、場合によると「そんなふうに呼ばれる年齢ではない」などと反撃される可能性もあります。(特に台湾の場合)
そこで無難なのは
と聞くことです。こうすれば相手が指示してくれますからそれに従えばいいのです。
中国語で、先生に対する敬称
教師・先生に対しての中国語による敬称は、
となります。
中国語で年齢差によって付ける「~さん」のような表現
中国語の「~さん」のような表現の中には、自分と相手の年齢差によって付けるものもあります。例えば、
のような言い方です。これは年齢による呼び分けですが、絶対年齢ではなく、あるグループの中で若い人が「小」、年上の人が「老」になります。知り合ってすぐこういう言い方をするわけではなく、付き合いが長くなって親愛の情が生まれてから自然発生的に生まれる呼びかけのようで、外国人がすぐ使っていいものではありません。
場合によると年上でもないのに知り合ってすぐ「老~」と呼ばれる人もいます。見るからに落ち着いていて、こう呼ばれるのも納得する感じの人だったりします。
中国語で夫を呼ぶときに使う呼称
また、ご主人、だんなさんのことを「老~」という表現で呼ぶ奥さんもいます。たとえば王さん(男)と楊さん(女)が結婚し、王さんが年上の場合奥さんはご主人を
と呼ぶわけです。どっちも「王さん」に変わりないんじゃないのと思うかもしれませんが、中国では女性は結婚しても姓は変わりません。ですから“老王”と“小杨xiǎo Yáng”の組み合わせです。でも奥さんの姓に「小」をつけて呼ぶ人の話は今のところ聞いたことがありません。一般にはともに相手の名前をそのまま呼びます。
中国語で「~君」「~ちゃん」にあたる愛称の表現
さてそれでは愛称に使う「~君」「~ちゃん」は中国語でどう言ったらいいでしょう。
これは中国の北(北京など)と南(上海など)では少し違います。
北はパンダのように名前の一部を繰り返します。たとえば「紅ちゃん」なら
です。繰り返して2度言うことで、「~ちゃん」のニュアンスが出ます。
南ですと“阿 ā”をつけて
などと言います。
なお、上記の言い回しは、日本語の「~君」「~ちゃん」のように、性別による違いはありません。男の子にも女の子にも使うことのできる愛称です。
中国語の「呼び捨て」は親しみを感じさせる
相手の名前をそのまま呼ぶ…これを日本語では「呼び捨て」と言います。とても失礼な感じがします。中国語ではこの失礼感がありません。逆に何かをつけると、たとえば先生が生徒に
などと言うと、ひどく改まった感じで親愛の情が消え、李紅君は「あっこれから叱られるんだ」などと身構える可能性があります。
日本人が中国に行き、日本語のできる中国人と仲良くなるとフルネーム呼び捨てで呼ばれ、「なんなのだコイツは?!」と思ったりします。でもこれは親愛の情を表しているのです。「同学」などの敬称を付けて呼ぶのは逆に失礼なのです。ただしこれは、お互いの立場が対等か、相手の方が低い場合に限ります。
中国語で地位の高い人に使う敬称
会社の社長さんや地位の高い技術者などには“~总 zǒng”という敬称をつけます。
“总经理 zǒngjīnglǐ”(社長・総経理)や“总工程师 zǒnggōngchéngshī”(技師長)などを意味する言葉です。
会社、役所、学校などで上司を呼び捨てにすることは友人でない限りありません。名前の後ろに役職名をつけたり、役職名だけで呼んだりします。
“头儿”は日本語にすると変ですが、一般に上司に対する親愛の情のこもった呼び方です
中国人は知らない人への呼びかけに親族呼称を使う
さて、ここまでは「(名前)+(~さん)」のような表現でしたが、ここからは名前抜きの呼びかけです。
中国人は知らない人に声をかける時「兄さん」「姉さん」「おじさん」「おばさん」など親族呼称を使うのが一般的です。当然この際、相手の年齢を一瞬で推測し、それ相応、あるいはそれよりちょっと下くらいの親族呼称を用います。
日本人の感覚からすると驚きますが、中国あるいは中華圏ではこれが礼儀です。相手を自分の親族関係に包み込むことで親愛の情を表す。これこそが相手への礼儀となるのです。
電車の中で中年女性が老人と思しき女性に席を譲る時なども一般に“阿姨”(叔母さん)です。中国の幼稚園児が女子大生に声をかける時も“阿姨”(叔母さん)です。日本なら「お姉ちゃん」でしょうが、「お姉ちゃん」だと幼稚園児である自分と同じ世代になってしまい失礼なので、“阿姨”(叔母さん)と呼ぶ、あるいはそう呼ぶようしつけられているのです。ただ最近これが“阿姨”ではなく、“姐姐 jiějie”(お姉ちゃん)になっているとも聞き、近年の若さ賛美の風潮が、伝統的な礼儀感覚を弱めつつあるようです。
名前がわからない相手に対する中国語の呼びかけの言葉
町を歩いていて見知らぬ人に声をかけたい場合、どういう声のかけ方をしたらいいでしょうか? 日本ですと「すみません」とか、職業がはっきりしている場合は「運転士さん」、「お巡りさん」、「駅員さん」など職種に「さん」をつければ事足りますね。中国人が町中で声を掛ける時には以下のような表現を使います。
中国語で、自分より年上の男性に対する呼びかけの表現
年上の男性に対して中国語で呼びかける時は、
のような言い回しがあります。
中国語で、自分より年上の女性に対する呼びかけの表現
中国語で年上の女性に対して呼びかける時は、
のように言います。また、女性に対しての中国語の呼びかけには他にも、
がありますが、こちらの方がより年上の女性に対して使う言葉なので、少し注意が必要です。
中国語で、老人に対する呼びかけの表現
高齢者に対して声を掛ける時の中国語は、以下のようなものがあります。
日本人が使いやすい中国語の呼びかけの言葉
では外国人である日本人が見知らぬ人に呼びかける際、中国人と同じように親族呼称が使えるでしょうか?これはなかなか難しいですし、中国人にとっても違和感があることでしょう。目の青い人から突然「兄さん」なんて呼びかけられたと想像してみてください。なんとも落ち着きません。
そこで外国人は、以下のような中国語表現を使います。
男性に対する中国語の呼びかけの表現
“先生 xiānsheng”は名前の後に付けると「~さん」の意味になりますが、単独で使うこともでき、その場合「だんなさん」のような呼びかけの表現になります。
この“师傅 shīfu”という呼称は一般にブルーカラーの職種従事者に使います。男性とは限らず女性にも使えます。タクシーなどのドライバーを“司机 sījī”(運転手)と言いますが、これを呼びかけに使うのは失礼な感じがします。こうした時この呼称がぴったりです。
女性に対する中国語の呼びかけの表現
小姐は一般に若い女性への呼びかけに使います。
そばにいる女性一般に使います。“女士”だけだと呼びかけには使いづらい感じがします。
呼びかけに使う中国語の「すみません」
上記どちらも男女にかかわらず使えます。日本人はこれらを使った方が無難でしょう。